価値観が変わるタイミング

中川:それでは石山代表の価値観が変わったタイミングについて伺いたいのですが。

石山:やっぱり一番印象的だったのはライブドア事件の前後ですね。目の前に600人も部下がいると、毎日人の問題が起きるんですよ。そこでいろいろな修羅場を見て、「人間って一体何なんだろう」とか「一体誰を信じたらいいんだろう」とか「どうすれば部下が思った通りに動いてくれるのかな」とか、皆思うと思うんですけど、それは当然感じていました。人が増えれば増えるほど、上に行けば行くほど、孤独になるんですよね。同じポジションの経験を持っている人の数はだんだん減っていくし、相談できる人の数もさらに減る。上は社長と副社長しかいなくて、向こうも忙しいのでそんなに怒ってくれることもなくなる。そうすると、自分で自分を成長させるしかないんです。まずプライベートのほうから言うと、名刺を持っているというレベルでの知り合いが3000人ぐらいいたのに、あのとき助けてくれたのはたった3人だけだったんです。友達だと思っていた人も、以前は僕を合コンに呼んだけど、今呼んだら犯罪者の友達だと思われるから呼ばなくなるんですよ。皆、簡単に掌をひっくり返してしまう。人間って条件とか状況が変わるとこんなに変わるんだなということを思い知らされましたね。

中川:そんな状況の中で、石山代表を助けてくれた方もいたわけですね。

石山:当時お世話になっていたニッポン放送の経営企画室長の大林さんが、100億あったうちの広告の売り上げがゼロになってしまったときに、広告のクライアントを連れて紹介したいって言って来てくれたんですよ。それは本当に涙が出るくらいうれしかった。大林さんとか、そばにいてくれる後輩とか、一緒に飲んでくれた友達とか、人情でつながっている数少ない人が僕を支えてくれたなと思います。その経験で分かったことは、皆、石山喜章ではなくて、僕のお金や権力について来ていたんだなということ。なので、これからの人生は自分のお金とか権力とかを目的に近づいてくる人と付き合うのはやめて、僕と人間として付き合ってくれる人のために時間を使おうと決めたんです。

中川:やっぱりライブドア事件が良くも悪くも石山代表に大きな影響を与えているというのは間違いないわけですね。

石山:公の面では、大義名分が良くても、会社としてのあり方がマズいとうまく行かないというのが大きな学びでしたね。うちと同じことをやっている楽天もYahooも、あのとき球団を持っていましたし、今でも良いほうに行っている。でも、うちは一番に乗り込んだのに、会社のあり方がマズかったからケンカ腰になってしまってダメだった。最後は逮捕までされて・・・全部あり方の問題だなと思っています。東芝にしても日興コーディアル証券にしても、うちと同じ不正を働いているのに、報道のされ方が全然違うじゃないですか。金額で言ったら向こうのほうが大きいのに、逮捕者も出ていない。「不適切会計」とは言われていたけど、うちみたいに「粉飾」とは言われないとかね。でもそれは、その人たちが社会貢献をしてきたからなんだなというのがよく分かりましたね。

中川:確かにそういう出来事があったら、価値観が変わりますね。結果的に、ライブドア事件というのは、石山代表の価値観をつくる上で良い影響だったと思いますか?

石山:もちろんです。あれがなかったら、未だに人や物事の上っ面だけを見て勘違いして生きていたんじゃないですかね。

中川:他に、これを読んでいる方に、石山代表がライブドア事件から学んだ教訓を伝えるとしたら、どんなことがありますか?

石山:周りの人が思っているあなたのイメージと、あなた自身が思っているイメージは全く違うということですね。昔、USENがうちの支援に乗り出してくれたときに、USENグループの若手の女性とその上司の課長さんとの打ち合わせがあったんですね。僕はその女性と知り合いで、お互いにタメ口で話していたら、課長さんは、「石山は自分の部下と同じレベルの人だ」と思ったらしくて、僕に対する言葉遣いとか態度がものすごい上から目線だったんですよ。こっちも支援を受けている身なので、低姿勢で接して、決して非難とかはしませんでしたけど(笑) 同じ日に、うちの副社長と私、USENの役員の方々との打ち合わせがあって、たまたまその場にさっきの課長さんが書記係として同席したんです。今度は、うちの副社長と私が自分の会社の取締役たちと対等に話しているわけじゃないですか。それを見て彼は「この人、偉い人だったんだ」と気づいて急に口調が変わったんですよ。この人、超分かりやすいなと思って(笑)結局、相手はあなたという人間を見ているわけじゃなくて、あなたのポジションや、身にまとっている洋服のほうを見ているんだなということを、事件前後ですごく感じましたね。

中川:へえー。それは面白いですね。

石山:定年退職した人が陥っているジレンマ、再雇用クライシスってこれだなと思って。昨日まで大手の○○商社の営業部長の○○さんとしてもてはやされて、取引先からも接待を受けていたのに、そのポジションがなくなったら当然誰も挨拶しに来ないし、お歳暮も来ないし、ゴルフも誘われない。当たり前ですよ、だってもうその権力がないんだから。それで、皆「寂しい、寂しい」って文句を言ったり、「俺は部長だったんだぞ」って威張ったりするんですけど、周りからしたら「はあ?何なの、このおっさん」って感じですよね。「会社の看板を背負っている」とよく言われますけど、皆その本当の意味を理解していないなと思います。

中川:多くの起業家は、会社をやっているといろいろなトラブルにぶち当たると思うんですけど、それって必ずしもマイナスの面だけじゃないのかなって、聞いていて思ったんですよ。石山代表にとってライブドア事件ってすごいショックで、ネガティブな要素もあったと思うんですけれども、それを経て今たくましい石山代表がいらっしゃるから、そういう意味で言うと、起業家にとって目の前で起きるネガティブな出来事は、自分次第でプラスに変えて行けるものなんですか?

石山:当然できると思いますよ。成功って宝くじみたいなもので、一部の環境や条件に恵まれた人しか達成できないかもしれないですけど、人としての成長とか成熟なら誰でも達成できるじゃないですか。僕は、人生というゲームの中で最後に残る楽しみって、学んで成長することかなと思っていて、それが経営者全員がやっている共通のゲームなのかなと思うんですよ。

中川:自分自身が学んで成長するのが経営者のゲームということですか?

石山:大体、お金を持った人が最後に何を楽しむかと言ったら、そこじゃないですか。一通り遊んで飽きた頃に、やっぱり学んで成長するって面白いよねと気づいて、皆やり続けているので。

中川:起業家はいろいろな出来事から学んで、気づいて、自分自身を成長させていくのが一番良いということなんですね。

石山:そうですね。それができれば会社も成長しますしね。

中川:なるほど。分かりました、ありがとうございます。

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