脳には変わったクセがある

「幸せのモノサシ」を知ろう

 ウシ子の物語のように何をもって幸せと感じるのか、そのモノサシはそれぞれ人によって違います。

 私たちは自分とは違う価値観に惹かれてパートナーと結婚しますが、離婚する原因のNo.1は「価値観が合わない」からです。多様な価値観があるからこそ多彩な料理や商品、サービスが楽しめる一方で、価値観の違いがもとで、争いが絶えることもありません。価値観の多様性は、「幸せの理由」でもあり「不幸の原因」でもあるのです。

 「判断基準」とは、この価値観の裏にある「価値を測るモノサシ」です。

 そういったモノサシで私たちは物事の価値を測り、「〇×」「善悪」「好き嫌い」「やって良いこと、やってはいけないこと」など、自らの行動を選択し、結果を判断するようになります。

 この判断基準は主に5つの特徴があります。

1、 人は誰もが判断基準を所有している。
2、 その判断基準はみんなバラバラで違うものである。
3、 判断基準を一つにしても問題が生じる。
4、 誰の判断基準も完全ではない。
5、 それにも関わらず無意識に「完全」と思って自分の考えに支配されてしまう。

 こうしてみると当たり前のことのように聞こえますが、これこそが人類に共通するあらゆる問題の原因でもあるのです。

 誰もが自分の経験や体験からつくられた独自の判断基準を持っていて、それは指の指紋やDNAと同じように一人ひとりバラバラで異なっています。

 価値観が合わないからと離婚、転職し、考え方の相違で争い合い、職場でも摩擦、衝突、葛藤が尽きません。宗教や思考が異なるからと戦争、紛争にまで発展してしまいます。

 かといって、これらをすべて1つの判断基準で統一しようとすると、さらに大きな問題が起こってしまいます。組織であればファシズムやロボットのようになってしまい、多様性が失われ、アイデアやイノベーションが生まれなくなってしまうからです。

 「バラバラだと問題、1つにしてもダメ。ではどうすればいいの?」と思いたくなりますが、判断基準は誰一人として完全ではありませんし、全知全能でもありません。

 しかし、私たちはつい自分の判断基準が絶対正しいと思い込んでしまい、自分の考えに支配されてしまうのです。

 ただ、これにも理由があります。

 脳がつねに自分の考えや判断を疑問視していたら生存できないので、人類が進化する過程で、脳はあるパターンを自動化してきたのです。現代科学がつきとめたその特徴をシンプルに整理すると、4つのクセがあります。

脳にある「4つのクセ」とは

 わたしたち人類がサルからヒトへと進化してから約5000万年が経過しておりますが、脳の構造自体はほとんど変わっていません。物理学者のミチオ・カク博士は、これを「穴居人の原理」と呼びました。われわれ人間の望みや人格、欲求は、まだ洞窟で暮らしていた頃の先祖と変わっていないのです。

 これまで脳科学、実験心理学、社会神経学、分子生物学などの研究によって脳の仕組みはずいぶん解明されてきました。その人間の脳の特徴をマインドテリトリーセオリーと潜在意意識の使い方を考案したノ・ジェス氏(ここの表現どうしましょうか?)はシンプルに4つで整理しています。⇐このようにつなげますか?

1、 部分だけ取る
2、 違いだけ取る
3、 過去とつなげて取る
4、 境界線を引く

この人間共通の機能(脳の初期設定)を知らないと脳に騙されてしまいます。コミュニケーションに活かすためにも、詳しくみていきましょう。
 

1、 部分だけ取る

たとえば、左図を見て、この枠のなかにある点をつなげて「犬」をかいてみてください。あなたはどんな犬をかきますか?

ペンをお持ちの方は実際に記入してみてください。

ちなみに点はいくつつなげてもOKです。

あなたは「犬」と聞いて、最初に何を思い浮かべたでしょうか?ある人は、犬の顔を思い浮かべ、ある人は漢字の犬の字をイメージしたでしょう。

 自分が浮かべたイメージに沿って、部分だけを取ってつなげていくのです。しかし、ほとんどの人は、すべての点をつなげて絵を描くことはありません。

 このように、脳には部分だけを取る特徴があります。

 この点(星)が事実だとすると。それぞれの事実をつなげてできあがった犬(星座)は「思い込み」や「先入観」を意味します。

 警察で「初動捜査の思い込みは禁物だ」と言われているのは、人間の脳はいったん思い込んだイメージに合わせて部分だけをつなぎあわせる傾向にあるからです。

 ある男性の父親が亡くなり、彼は火葬場で父親の遺骨と対面しました。

 すると、焼かれて灰と骨だけになった父の棺になかから、ハサミのような医療器具が見つかったのです。彼はこのハサミを見つけると、父の手術に立ち会った医師が、父の手術後にすぐ医師を辞めているという事実を突き止め、「辞めた医者が医療ミスを起こしたのだ」という結論を導きました。

 彼はその医師を父の仇だと信じて探し出し、その事実を追及すると、なんとその医師は「医療ミスを告発しようとしたら、病院をクビになった」というのです。彼自身がおんぉいこんでいた世界が180度ひっくり返ったのです。

 まさに彼は自分が認識した「ハサミ」と「手術後の辞職」という点だけ結びつけ、「その医師が団人だ」という思い込みの星座をつくっていたのです。

 このように、事実は本人に確認するまでわかりません。

 人は自分の経験、自分が見聞した情報だけをつなぎあわせることで、先入観を持ち、それを基準にさまざまな選択・判断をするようになります。

2、 違いだけ取る

 脳は物事の「違い」だけを取るクセがあります。

 まずは、左図をみてください。

 2つのプリントの絵がありますが、上下どちらのプリントが大きいでしょうか?

 じつは、上下2つのプリンは同じ大きさなのですが、脳の機能がフィルターとなって上のプリンが大きく見えてしまいます。

 これは、上のプリンの底辺の長さと、下のプリンの城辺の長さという部分だけとって、脳が無意識下で長さの違いを比較し、上のプリンのほうが大きいと錯覚してしまっているのです。では、仕掛けが分かったうえでもう一度同じ絵をみてください。同じ大きさに見えるでしょうか。これがまさに脳の機能の1つで、頭でわかっていても「違って」見えてしまうのです。

 これと同じケースは職場でも起こりえます。

 たとえば、職場で年齢が近い同僚と「違い」だけをとり、「あいつのほうができる/できない」と判断することはないでしょうか。これも結果という「部分」だけを見て、自分との「違い」を比較しているということに他なりません。

3、 過去とつなげて取る

 あなたに一つ質問です。

 ある言葉の不自由な人が歯ブラシを購入しようとしています。

 彼は歯を磨くジェスチャーをして、店員にうまく伝えることができたので、目的の歯ブラシを買えました。

 次にある目の見えない人が、自分の目を隠すためにサングラスを買おうとしています。さて、彼はどんなふうに表現をすれば、サングラスを買うことができると思いますか?

 この問題のトリックは、(脳が無意識のうちに)2つ目の問いの前提条件に1つ目の「口が利けない」を入れてしまっていることにあります。よって答えは「サングラスを下さいと言う」です。

 お店にきた二人は別人であるにも関わらず、勝手に「過去とつなげて」考えてしまうのが、脳の認識のクセであり、やっかいなところなのです。

4、 境界線を引く

人間の脳は境界線のないものは知覚できません。「間を絵で表現してくださいといわれたら、描くことができるのでしょうか?物体のように境界線のあるものは五感覚を通して認識しやすく、逆に境界線のない世界は認識しづらいのが脳の特徴です。

 日本には間の文化がありますので、話の「間合い」など境界線のない世界をと入り入れたレベルの高い文明だと感じていますが、脳が何かを認識する際には、パッと見て部分だけを取り、違いだけをとって、過去のイメージとつなげたうえで、境界線を引いてとるクセがあります。

 以上のように脳の4つのクセを理解すると、人間関係の観方も変わってきます。

 ちなみに、成功している有名経営者には結婚して外国人のパートナーをもらっている人が多いという話がありますが、この話と人間関係をうまくつくれる人の共通点はどこにあるかわかるでしょうか?

 答えは、人との違いを楽しめている、という点です。

 どうしても日本人同士の関係だと「これぐらいはわかっているだろう」「夫(妻)も同じ考えのはず」と無意識に同一視する傾向があります。それに対して外国人との結婚生活をうまく送れている人は、最初から相手は自分と違う考えや価値観、判断基準を持っていることを前提にしています。

 むしろ、自分とはまったく違う発想や受け取り方を「おもしろい」と素直に感じています。自分との違いに腹を立てるのではなく、違いを楽しんでいるのです。

 自分の意見と相手が違っていても「わかってくれない」と不平不満を言うのではなく「そう思うんだ!」と新たな発見をした感覚なのです。

 脳が見つける「違い」を自分との対立ととらえるか、別の可能性ととらえるかで、まったく世界が違ってきます。もちろん、違いを見つけてしまうのは誰もが持っているクセなので、それはそのままで構いません。

 ただ、脳のクセを理解していると、「脳がまた部分だけ扱っているんだ」と冷静に思考を観察できるようになります。

 すると、自分自身の考え方を客観的にみる姿勢が養われ、次第に自分の脳が反応しているだけだと実感できるようになります。

自分の脳が「部分だけ」を取って思い込みの星座をつくったり、相手との「違いだけ」をみて比較し、嫉妬する心があれば「また脳が勝手に違いだけとっているんだ」と冷静に観察し、脳のクセだと確認してみてください。それが明確にわかれば、自然とその感情から離れていくことができます。そして全体が客観的にみえるようになります。

 こうしたイメージ・トレーニングを通してものごとを俯瞰できると、徐々に自分の考えや思考のパターンを観察できるようになってきます。自分の思い込みから抜け出し、客観的に「ありのまま」をみることができるのです。

 判断基準の特徴と脳のクセを理解して観察することで、人間共通のパターンから抜け出すことができると、潜在意識から湧いてきた自分の考えにいちいちとらわれなくなり、そのぶん選択の自由度が広まります。

 潜在意識のパターンを変えることができれば、そこから生じる言葉や行動も変化し、最終的に相手が自分に対して持つイメージも変えられるのです。

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ライブドアのメディア事業をゼロから立ち上げた経験(6名→600名)のある石山喜章が、御社の組織づくりに関する課題を解決します。成長企業に必要な「理念・バリューの再構築」、「評価制度の設計」、「幹部人材の育成」など、業績の上がる組織を創りたい経営者の方はご相談ください。

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