アイデンティティーの影響力とビジョンの関係

中川:「IDの影響力とマインドーム」というテーマでお話を伺いたいのですが、これについてはいかがですか?

石山:「マインドーム」というのは、「マインド」と「ホーム」を掛け合わせた造語です。家って出発点であり、ゴールなんですよね。旅行に行って帰ってくる、学校に行って帰ってくる、病院に行って帰ってくる、全部家から出発して家に戻ってくる。そういう意味で言うと、アイデンティティって自分の家みたいなものなんです。例えば、「私は誰にも分かってもらえない」というアイデンティティを持っている女性の場合、いろいろな人と付き合っても結局私は分かってもらえないという経験をしてしまうんですよ。逆に、「俺って、なんてツイてるんだろう」と思っている人は、どこに行っても、何度失敗しても、周りの人たちに助けてもらえたりしてうまく行ったりするんです。だから、現実は自分でつくり出しているんですけど、意外とそれに気づいていない人が多い。アイデンティティを変えないと現実を変えられないということを皆に伝えたいですね。

中川:なるほど。ちなみに、石山代表は、どんなアイデンティティをお持ちだったのですか?

石山:僕はなぜか高校の頃から、立派な経営者になるにはそれ相応の修羅場をくぐらなければならないって思っていたんです。そう思いながら生きていたら、まあ見事にライブドアで修羅場ばかり経験するはめになってしまって(笑)それで事件が起きて3年ぐらい経ったとき、いつまでこれを続けるんだろう、そろそろ平和になってもいいんじゃないかなと思ったんです。そうやって自分のことを許せたときから、トラブルがいっさい起こらなくなったんですよ。引き寄せの法則じゃないですけど、別に修羅場をくぐらなくても良い経営者になれるじゃんって、それまでの思い込みを手放した途端に平和になったんですよね。びっくりでした。

中川:自分のアイデンティティがいろいろなところに運んでくれるし、戻してくれるということですか?

石山:そうです。自分はこういう者だと思っているから、そこから考えや行動が生まれて、それが身近な関係性や原因をつくっているんです。僕が社長だと分かった瞬間、周りの対応が変わるのと同じように、無意識に自分をどう思っているかで現実が全て変わってくるんです。

中川:面白いですね。確かにおっしゃる通りだと思います。

石山:それと、ここで押さえておきたいのが「自己否定」です。

中川:自己否定ですか?

石山:日本人は自己否定する人が異常に多いんです。「自分には価値がない」「自分なんか…」と思っている人は、本当にそうやって扱われてしまうので注意が必要なんですよ。ちょっと嫌みな言い方になりますが、お金持ちって自信過剰で謙遜しない、謙虚じゃない人が多いじゃないですか。でも、「私ぐらいの人間ならば、これぐらいできて当たり前でしょ?」と思っていると、不思議と現実もそうなっていくんですよ。

中川:石山代表のお話を伺っていると、組織論や人事制度、研修などももちろん大事なのですが、まずは経営者自身がどういう価値観を大事にしているのか、自分がどうしたいのか、自分のアイデンティティがどうなっているのかを定めないと、なかなか組織はうまく行かないんだろうなという気がします。

石山:そうですね。だって、『孫子の兵法』でも「己を知り、敵を知れば、百戦危うからず」という言葉があるじゃないですか。自分のことを知らないで敵と戦ったら、百戦百敗ですよ。

中川:自分のことも知らずに敵と戦っても勝てないということですね。分かりました、ありがとうございます。

「○○さんのトリセツをつくって渡す」

中川:「○○さんのトリセツをつくって渡す」について伺いたいのですが、よろしいでしょうか?

石山:これは一人一人のアイデンティティや価値観を皆でシェアしましょうということです。例えば、僕は昔、「いつか捨てられるんだ」と思い込んでいました。だから、捨てられないように、他人に何らかの価値を与えなければならない、役に立たなければならないという強迫観念があったんです。そういうのを社内の皆でシェアすると、「あ、なるほど。だから、この人はこうなんだ」とお互いのことをより理解しやすくなるので、それをやりませんかということです。

中川:なるほど。特に、スタートアップの経営者のように、自分で会社を立ち上げて組織をどんどん引っ張っていくリーダータイプの方って、なかなか自分の弱みや内面を見せたがらない人が多いと思うのですが、そういう人たちにはどのように説明して自己開示させていくんですか?

石山:弱みを見せ合って、それを補完し合える組織のほうが強くなるということを説明しますね。営業戦略でも何でも、明らかにこれは間違っているというのを幹部が指摘しないで放っておいたら、その事業は絶対失敗しますよね。自分たちがつくっているメディアやホームページで誤字脱字を中川さんが見つけてくれたとして、それを言わないで放っておいたら直しようがありませんし、言ってくれたほうがミッションの達成に貢献できます。それと一緒で、自分が弱みだ、見せたくないと思っているものを放っておくと、それって社内の人が言わなくても社外の人は気づきますから、「これ間違っているんじゃない?」とか「これどうなの?」って結局いつかは突かれるわけです。だったら先に気づいた人が指摘して直しておいた方が、サービスのクオリティも、営業戦略も完成度が上がるよねと、それをやらないと損しますよという、そういう話ですね。

中川:やっぱり補完し合えるからチームでやるわけですもんね。

石山:例えば、「俺は部下の話をめちゃくちゃ聞いているぜ」とか、「俺は部下をコーチングしているんだよ」とかわざわざ言う社長って、全然部下の話を聞いていないことが多いんですよ。

中川:確かに。部下の話をよく聞いている人って、自分でわざわざそういうことを言わないですよね。何で話を聞いていない人ほど、そういう風に言うんでしょうか?

石山:周りから話を聞かない奴だと思われていることが何となく分かっているので、「いや、俺は部下の話をちゃんと聞いている」と思いたいんでしょうね。「弱い犬ほどよく吠える」って言うじゃないですか。

中川:そうか。それは目から鱗ですね。

石山:それで言ったら、僕は昔『3×3EYES(サザンアイズ)』という漫画が好きだったんです。妖怪が人間になりたいという物語なんですけど、自分が妖怪だから人間になりたいという目標が成立するじゃないですか。ということは、会社の経営理念とか社長本人が言っていることって、今そうじゃないからそうなりたいと言っているんですよ。以前、経営理念に「人を大事に」と掲げている会社を見に行ったことがあるんですけど、全然人を大事にしていなかった(笑)そもそも、本当に人を大事にしている社長さんは、経営理念に「人を大事にしたい」なんて絶対に掲げませんよ。

中川:本当にそうですね。ということは、経営理念を見ればその会社の状態は何となくイメージがつくということですね?

石山:分かりますよ。建築業界は「安全第一」という経営理念が多いですけど、あれは実際に事故が起こってケガをしたり人が死んだりしているから掲げるわけで、本当に無事故だったらわざわざ掲げる必要がないんです。

中川:なるほど!

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ライブドアのメディア事業をゼロから立ち上げた経験(6名→600名)のある石山喜章が、御社の組織づくりに関する課題を解決します。成長企業に必要な「理念・バリューの再構築」、「評価制度の設計」、「幹部人材の育成」など、業績の上がる組織を創りたい経営者の方はご相談ください。

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