人間の判断基準を見える化した「マインドテリトリーセオリー」

人生の可能性を決めているのは、じつは自分だった!?

 潜在意識の構造と、もう一つ理解しておきたいのが、このコラムの考え方のベースにもなっている「マインドテリトリーセオリー」です。

 「マインドテリトリーセオリー」とは、「マインド(心)」と「テリトリー(領域)」、そして「セオリー(理論)」を合わせた弊社独自の造語で、人間がそれぞれ持っている「心の領域を説明する理論」を指します。
 
マインドテリトリー(心の領域)によって、私たちは自分の考えや感情、言葉や行動、誰とどういった関係を築くかを判断しています。そして、マインドテリトリーは人生の範囲を決める基準点であると同時に、コミュニケーションの出発点かつ終着点でもあります。

 これは、例えば「外出」をイメージするとわかりやすいでしょう。
 
 私達は会社や学校、旅行へ行くとき、オフィスや校舎、旅行先を目的地と思いがちです。しかし、実際は子どもの頃に「うちに帰るまでが遠足ですよ」と言われたように、自宅から出発して、自宅に戻っていくという行為を何度も繰り返します。

 つまり、意識の目的地は遠足に行く場所だけど、潜在意識の出発点とゴールは同じ自分の領域なのです。

 小屋の中心にある杭につながれている犬は、一定の半径より外には行くことができません。これと同じで、私たち人間も自分が作り出した判断基準(マインドテリトリー)によって思考や行動の範囲、ひいては人生の可能性までを無意識に決めてしまっているのです。

 この半径、すなわち自分が思い込んでいる世界から出るためには、杭を引っこ抜くことが必要となってくるのです。

 もちろん、それをしないで、現在の自分のまま「誰とも深い関係はつくらない」という人生を続けていくことは簡単です。

 しかし、固定されたままの判断基準で生き続けると、どのような人生を迎えることになるでしょうか。

マインドテリトリーが営業に与える効果

 ここからは、具体的にとある営業マンAさんとトップ営業マンBさんの例から解説を致します。

 Aさんは自社商品の広告を売り込みにC社の社長を訪問しました。今回の訪問の目的は提案を行う前の情報収集、ヒアリングで来社したようです。

C社社長「いやー、コロナですっかりさ、大手のお得意さんも工場止まっちゃって大変なわけよ。知り合いの会社も倒産し始めたしそろそろ手を打たないと、と思って声をかけたわけ。」

Aさん 「いやー、ありがとうございます。恐縮です。」

C社社長「おたく、ものづくりのネット広告では一番でしょ?会員数も多いみたいだしさ、広告出したらやっぱりどっかーんって商品売れるわけ?」

Aさん 「まあ、そういうお客さんもいらっしゃいますよ(そんなすぐ売れないよ)。」

C社社長「いやー、本当に仕事ないしさ、もう御社の広告に100万でも200万でもかけてバンバンお客さん取りたいわけ。もう社運をかけてって気概だよ。なんとか頼むよAさん。うちを助けてくれよ。」

Aさん 「あ、はい頑張ります(いや勘弁してよ。社運をかけてって重いなあ、うちの商品そんなに良くないし魔法の杖でもないからなあ。しかもC社さんかなりニッチな製品だから広告使っても売れそうにないし。こういうお客さんってだいたい広告出して1か月で効果がでないとか言ってクレーム言ってくるんだよなあ。失敗の事例でも紹介して、うちの広告とはアンマッチって言って何とか逃げるか…)。」

 そして後日、なんとAさんは断りの連絡をC社に入れたのでした。

 さて、ここまでがAさんの例です。みなさんはどのように感じましたか?かなり確度が高く、しっかりフォローすれば受注できそうなお客さんではないでしょうか?しかしAさんは自分からお断りの連絡を入れてしまいました。

 Aさんの状態を、マインドテリトリーセオリーに則って解説しますと以下です。

① C社社長は自社の売上が落ちてきていることを憂慮している。Aさんの会社のネット広告を使えば売上が伸びると期待している。
② Aさんは過去の失敗を基準として、期待値が高くなってしまっている企業はクレーマーになる、という判断を行ってしまっている。
③ 優良な顧客になりえないと判断してしまっているので、ヒアリングを諦めてしまった。
④ 結果、AさんはC社に断りの連絡をしてしまった。

AさんはC社が顧客になるかもしれないという可能性に、自ら蓋をしてしまっています。確かに明らかに向いていない、効果を見込めない事例もあるかもしれませんが、ろくにヒアリングもせず自分の判断基準、価値観のみをベースに物事を理解してしまっています。

このままだと、Aさんにはどんなデメリットが生じてしまうでしょうか?

① Aさんの見込み客が減少していく。
② Aさんはさらに見込み客の開拓に時間を掛けざるを得なくなる。
③ 見込み客の減少=契約社数も減少していく。
④ ②により残業が増える。
⑤ ③により、Aさんの営業成績が下がる。

Aさんは自分の判断基準、すなわち自分で決めたマインドテリトリー(心の領域)から出られず、自分の価値観のみで営業を行った結果、パフォーマンスが下がってしまっているのです。

 では、トップ営業マンのBさんが同じくC社に訪問を行った場合、どのような展開になるでしょう?

C社社長「いやー、コロナですっかりさ、大手のお得意さんも工場止まっちゃって大変なわけよ。知り合いの会社も倒産し始めたしそろそろ手を打たないと、と思って声をかけたわけ。」

Bさん 「お声がけいただき、ありがとうございます。」

C社社長「おたく、ものづくりのネット広告では一番でしょ?会員数も多いみたいだしさ、広告出したらやっぱりどっかーんって商品売れるわけ?」

Bさん 「うーん、もちろんケースバイケースですよ(単純な広告提案だけだとC社の製品は売れないかもな。もう少しヒアリング進めるか…。)」

C社社長「いやー、本当に仕事ないしさ、もう御社の広告に100万でも200万でもかけてバンバンお客さん取りたいわけ。もう社運をかけてって気概だよ。なんとか頼むよCさん。うちを助けてくれよ。」

Bさん  「承知しました。より良い提案をさせていただくためにも、もう少し御社の製品の良さと具体例を教えていただけませんか?」

その後、BさんはC社の製品の良さや適用事例、さらに営業組織と営業マンに関して何
度もヒアリングを行いました。営業組織にも課題があると見抜いたBさんはアフターフォローの手厚いオプションを提案。結果、大型受注につながったのでした。

 さて、ここまでがBさんの例です。Aさんと同様にマインドテリトリーセオリーに則してまとめますと以下の通りです。

① C社社長は自社の売上が落ちてきていることを憂慮している。Bさんの会社のネット広告を使えば売上が伸びると期待している。
② Bさんは過去の失敗を基準として、期待値が高くなってしまっている企業はクレーマーになるという判断が頭を過ぎるが、もっとヒアリングをしてみないと分からないと考え、自分のマインドテリトリーから出てC社社長の話を聞こうとしている。
③ C社の売上が上がらない課題を発見し、その課題解決の提案を行った。
④ 結果、大型受注を獲得することができた。

BさんはAさんと同様の判断基準を抱えてはいたものの、自分のマインドテリトリーから一歩出ることによってヒアリングを丁寧に行い、それが大型受注につながるという結果になりました。

マインドテリトリー(心の領域)から一歩踏み出すと、Bさんにはどんなメリットが生じたでしょうか?

① 見込み客が減少せず、受注の確度が高まった。
② 引き続き見込み客を増やす活動は行うものの、そこまで工数をかけなくても良い。
③ 契約者社数が増加した。
④ 結果、残業は増えず営業成績は向上した。

ご自分のマインドテリトリー(心の領域)から出ることに対して、大変さを感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、Bさんはその領域を出ることによって業務も効率化し、成績も向上する結果につながっています。

 確かに、マインドテリトリーを自覚し、手放していく行為は訓練が必要です。しかし手放すことで多様な価値観を受け入れ、仕事のみならず人生そのものを豊かにしていけるのであれば、時間を投資する価値があるのではないでしょうか?

 改めまして、冒頭にもどります。

「マインドテリトリーセオリー」とは、「マインド(心)」と「テリトリー(領域)」、そして「セオリー(理論)」を合わせた弊社独自の造語で、人間がそれぞれ持っている「判断基準」を指します。

みなさんは、マインドテリトリーから出ず、ご自身の価値観の世界でこれからも生きていきますか?

それともマインドテリトリーセオリーを理解し、その領域から出て多様な価値観を受け入れ、豊かな人生の第一歩を歩みますか?

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